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「千姫絵巻」 昭和37年1月
人質同様の扱いを受けながらも秀頼を慕い続けた夏の陣までの千姫にかなりのページを割いている。 この部分が後半の千姫の空蝉の気持ちを読者が共有するための重要な布石になっている。
共に死のうと誓った千姫がなぜ秀頼の下へ戻れなかったか・・・命がけで千姫を救出した坂崎出羽守への仕打ち・・・等々、胸に迫るものがある。 坂崎出羽の家臣(秀頼の面影を宿している)が主の仇として千姫の命をつけねらいながら果たせずに同情がやがて恋慕に変わってゆく。 |
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「花の濡れ燕」 昭和37年3月
小太刀の流儀を学びながら長刀を使った刀法を編み出す小次郎は師に疎まれ破門される。 互いに心を通わせてきた兎弥を振り切り果てしない剣の旅に出る小次郎。 師に許された試合とはいえ兎弥の兄を斬ってしまった小次郎は剣の道に生きる決心をしたのだった。 小次郎の後を追う兎弥・・・。 しかし運命の悪戯か、行く先々で小次郎とすれ違う。 一方、小次郎は京で生涯の宿敵武蔵と出会う。 琉球娘、美美の舞から秘剣燕返しを編み出す。 運命の決闘の日、勝負は一瞬にして決まった。 秘剣燕返しは武蔵の額の鉢巻を両断した。 「勝った!・・・ゆ・・・、夢が・・・。」微笑を浮かべて小次郎は浜ぐるまの花の上に倒れこんだ。 |
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「天草四郎」 昭和37年4月
記憶を失い放浪する四郎と名乗る少年がいた。 ひょんなことから異国から天童としてやってきた少年の身代わりになり、ここに天童「天草四郎」が誕生した。 天童の御名のもと、天草四郎ある限り必ず勝つ!! そんな戦いの中で多くの人々が死にいく様を嘆き迷う四郎。 突然、戦火の中で失った記憶が戻る四郎。 四郎は放心状態のまま戦場を出て行く。 その日、原城はついに落城の猛火に包まれた。 その業火の中、十字架をかざして最後まで立ち続けた少年の姿は・・・!? 三万の信徒を絶望させまいと四郎に代わり天童として身代りに立ったのは・・・四郎に命を救われたあけみだった。 |
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「絵島生島」 昭和37年5月
時は六代将軍、家宣の治世。大奥では将軍の生母、天英院が権力を振るっていた。しかし家宣が他界し幼君、家継の世になると生母、月光院が勢力を持ち始める。月光院の信頼厚い絵島は人気役者、生島新五郎と引き裂かれ大奥に上がったという経緯があった。 天英院派の宮路はそんな絵島と生島を利用して月光院を失脚させようと図る。 姦計と知りつつ絵島への想いを抑えきれない新五郎は長持ちに潜み大奥へ。しかし事は露見し、絵島は一身に罪を背負い高遠へ配流、新五郎は三宅島へ遠島となる。 どんなに遠く隔てられても互いの心が結び合っていればそれを幸せに生きて行く。 二人に春はふたたびめぐらなかった。だが永遠に幸せの夢から覚めぬ生涯であったに違いない。 |
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「お七狂乱」 昭和37年6月
互いに想いを寄せながらも素直になれなかったお七と吉三郎。 歴史に残る振袖火事の避難先で二人は再会する。 この火事騒ぎの折、お七を助けた利助との婚儀を進める両親。 あくまでも拒むお七。 一方、寺の住職に諭された吉三郎は思い乱れながらお七の元を去る決心をする。 吉三郎の元に駆けつけようとするお七の前には町の木戸が・・・! 半鐘が鳴れば木戸が開く。 お七は意を決して梯子を上り始めた。 雪の夜空に鳴り響く半鐘の音。 理由なく半鐘を鳴らせば死罪! はたしてお七は・・・。 |
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「朝顔日記」 昭和37年7月
典型的なすれ違いの悲恋物語。 もっとも最後は幸せな未来を予想させる結末にはなっている。 宇治の蛍狩りで知り合った深雪と阿曽次郎。 運命は二人を結びつけまた引き離す。 中江藤樹に師事し、頭角を現した阿曽次郎は名も熊沢蕃山と改め池田藩主のお声がかりで深雪との縁談が持ち上る。 熊沢蕃山が阿曽次郎とは知らず、深雪は家を抜け出し阿曽次郎を追って旅に出る。 しかも逃げ出す途中で目を痛め、失明してしまう。 見えないことがまた新たなすれ違いを生むことになる。 |
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「小袖葛の葉」 昭和37年8月
形見の小袖を手に、愛する人の面影を求めて踊り狂う保名!
恋しくば たずね来てみよ 和泉なる
信田の森の恨み葛の葉
古典からにじみ出る哀歓と 妖しいまでに美しきロマン
小島剛夕先生の待望の長篇抒情詩遂に成る!
「朝顔日記」掲載 予告編より |
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「春秋走馬燈」 昭和37年9月
春には花のはかなさ 秋には孤愁の心秘めて
我もまた変転の人の世に歳月はめぐれど………
名作につぐ名作 長篇ロマンをみずから開拓、
今日あらしめた巨星小島剛夕の贈る
走馬燈に因んだ哀切の大力作!!
「小袖葛の葉」掲載 予告編より |
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「お小姓吹雪」 昭和37年10月
身は二つ 心一つの希いさえ非情の世に吹く小夜嵐!……
黎明の本能寺に花と散る若き蘭丸の悲運!
その格調の高さと較ぶるものなき詩情に
全国長篇ロマン読者の期待を一身に負う
巨匠小島剛夕最新鋭の戦国絵巻の超大作!!
「春秋走馬燈」掲載 予告編より |
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「おぼろ常夜燈」 昭和37年11月
互いに心を通わせて手に手を取って故郷を捨てた小四郎と美乃だった。 江戸にささやかな幸せを見出そうとしていた矢先、運命の歯車が狂い始めた。 常夜燈の前で誓った愛・・・生きて小四郎と再び会うためにスリに身を落とした美乃。 そして小四郎はいつしか「鬼あざみ」と呼ばれる人斬りに・・・。
ああ…心なきか港のあかり 歳月は空しく 幾度ここに星を仰ぎ月に想いをはせしか…
あの頃の あのままのたぐいなく清らけきかの人に逢うはいつの日…… |