長篇大ロマン・昭和36年

クリックすると大きい画像が見られます
「花の炎」 昭和36年3月 怪談・別冊

互いに真実の愛を交わしながら、公儀隠密であったかおりを死に追いやった喬四郎・・・そのかおりの実の兄とも知らず、やはり隠密の三平と友情を結び、妹、織江の幸せを願うが・・・喬四郎の願いも空しく、三平の正体を知った織江は自害。喬四郎は三平を追って地獄谷へ・・・
人間の愛情も・・・恩讐も・・・
ただ天空高く花の炎と舞い散ってゆく・・・
「赤い雲の峰」 昭和36年5月 怪談

行方知れずの兄に代わり甲府勤番として着任した京之助。 形見人形が取り持つ根帯衆の乙女との悲恋・・・武田信玄の隠し金鉱に群がる欲望・・・京之助と明香の純愛もすべて白い雪の中に・・・
法性火の燃えるとき愛染めし者の夢はうたかたに終るとも言う・・・
雪の中の清らかな死・・・
「雨のおらんだ坂」 昭和36年6月 怪談

転びバテレンの子という出生の秘密を知ったときから恋を捨て夢を捨てて殺戮の世界へと走った千四郎。 愛する美保は病に倒れる。やがてキリシタン教徒たちが神と崇める美保に良く似た奈美と出逢う。
最後にはその奈美を救うべく斬り死にする千四郎。
亡霊となった美保に励まされ、すでに死んでいるはずの千四郎が捧げ持つ十字架の光を遙か海上で見とめた奈美がつぶやくく・・・「それでは、あなたは教えの道を・・・。」
「うず潮の果て」 昭和36年7月 怪談・増刊

親友に裏切られ恨みを抱いて果てた父の亡霊に導かれるように阿波の地にやってきた隼人。 そこに見たものは愛しい千鶴と瓜二つの双葉という乙女。 しかも双葉は父を裏切った親友の娘だった。 隼人を追って旅に出た千鶴は隼人の心を知り、自ら身を引くが・・・
一人淡路のたそがれに・・・・・・想い哀しく笛を吹く・・・・・・・・・・
ああ・・・一本の竹笛なれど・・・こめし願いを・・・君知るや・・・・
「瓜二つの女性」、これもキーワード。 ひたむきな愛、愛するが故に身を引く。 このあたりの心の機微がこの後、複雑に発展していく。
「落花の舞」 昭和36年9月 怪談・増刊

元会津松平藩の家臣であった銀之丞、新八郎の兄弟。 その二人に見立てて桐の木を大切に育てる母。 桐の葉が青々としている間は二人は元気でいる・・・。 しかしやがて兄の木が枯れる。 新撰組に入隊している兄、桂小五郎を敬愛する弟。 兄を切ったのは弟であった。
忠節の鬼であった兄の遺志を継ぐために徳川方に殉ずる決心を固める新八郎。 やがて運命の戦いが・・・。 枯れてゆく弟の桐の木にすがり泣き伏す母。
「私は死なぬ。必ず生きて帰る。」 恋人新八郎の言葉を胸に今日も面影橋に立つお園。その哀しい姿が当時の人々の口の端にのぼったこともあった・・・。
「濡れ髪草紙」 昭和36年10月 怪談

この話は「番町皿屋敷」を下敷きにして、武士としての名分、体面を重んじるか、腰元菊との純愛に生きるかで苦悩する白柄組の青山播磨の物語。 お菊に心を疑われた播磨のやり場の無い怒りとその菊を切ってしまった自責の念。 ラスト、菊の墓に瀕死の重傷を負いながらたどりつく播磨の真心が泣ける・・・
播磨が果てて3年の月日が流れ、二人の墓が並んで建つ寺の住職がつぶやく・・・「あれほどの重傷で、どうしてこの墓地の階段をのぼってきたのか・・・」息絶えた播磨の手には一本の菊の花がしっかりと握られていた。 この世で結ばれなかった菊と播磨はもう未来永劫離れることはない。
「阿波の踊り子」 昭和36年11月 怪談

抜け荷の罪を着せられ非業の死を遂げた両親。 その仇を討つべく果てしない旅を続ける新太郎。 旅の行きずりに知り合った踊子お鈴。 影に日なたに新太郎を助け見守る謎の六部。 
奇しきは人の縁。
すべての糸がもつれて解けて・・・。
阿波踊りの熱狂と歓喜の中、憎い仇が・・・。
哀しい結末の多い中、新太郎・お鈴を取り巻く善意の人々の活躍で若い二人の幸せを暗示して物語は終わります。
「ふり袖狂女」 昭和36年12月

時は幕末。 日本の行く末を論じながら運命に翻弄される清十郎。 ふとしたことで助けたお夏。 そしてお夏に瓜二つの雪江。 雪江と互いに心を通わせながら浮き雲の如く流されてゆく清十郎。 ひたむきに清十郎を慕うお夏。 しかし雪江への思慕絶ち難く清十郎はお夏の元を去る。 清十郎恋しさに心を失うお夏。
遙か蝦夷の地に・・・
それぞれの思いを乗せた蝦夷船が行く。
そこに待ち受けている運命は・・・・・?