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23 花咲ける武士道

(解題)
つばめ出版発行。 本編160ページ。 昭和38(1963)年5月頃に出版された。 『書籍雑誌卸月報』では4月の出版予定になっている。 戦国の世にそれぞれの武士道を追い求める三人の男。 そして恋に生きる二人の女。 五人の男女が織り成す愛と闘争を描いた秀作。 小島剛夕が創り出したキャラクターの代名詞的存在と言える女忍者おぼろが、「長篇大ロマン」シリーズに初登場した作品でもある。 この作品は、昭和43(1968)年に『戦国くの一帖』としてつばめ出版から改題再出版された。 また、リメイクもされ、「おぼろ十忍帖」の第十話「風とゆく武士」として、『週刊漫画アクション』昭和42(1967)年11月2日号から同年11月23日号まで全四回連載された。

(あらすじ)
浅井長政の居城・小谷城は、織田信長率いる大軍に取り囲まれ、落城寸前であった。 決戦前夜。 風代隼人は、運命に逆らわぬという己の武士道を貫くため、城内に残る決意をする。 忠義一辺倒の武骨者・武平次も城を枕に討死の覚悟。 ただ一人、立身出世を夢見る丞馬だけが逃げる気満々。 隼人は、許婚の衣香を丞馬に託して二人を城外へ逃がす。 翌日はやはり総攻撃だった。 小谷城は燃え、浅井家は滅亡した。 隼人と武平次は一か八か死中に活を求めてそれぞれ生き延びる。

女忍者おぼろに瀕死のところを救われた隼人は、忍びの里で治療を受ける。 おぼろは隼人に恋していた。 一方、衣香は小谷城から逃げる時に約束していた場所で隼人を待っていた。 そんな衣香を愛するようになる丞馬。 二人の有様を密かに垣間見た隼人は、夢を追う丞馬と死を求める自分を比べて、衣香から身を引く決意を固める。 喜ぶおぼろ。 隼人もおぼろの想いを受け止めるが、忍者にとって恋は禁物である。 それに気付いた隼人は、そっと忍びの里を去る。 恋焦がれるおぼろは後を追った。 その頃、武平次は琵琶湖周辺に出没する盗賊の頭領になっていた。 彼は隼人を捜すおぼろに出会う。 やがて武平次は知らぬうちにおぼろを愛するようになるのだった。


(補足/by風かをる)
剛夕先生は、「おぼろ」と言う名前に並々ならぬ愛情を持っていらっしゃいました。 同時期に忍者ものを多く手掛けていらした白土三平先生が「おぼろ」の名称を使わせて欲しいとお願いしたことがあったそうですが、これだけはきっぱりとお断りになったとお聞きしました。(西村つや子氏・談)