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15 小袖葛の葉


(解題)
つばめ出版発行。 本編126ページ。 昭和37(1962)年8月頃に出版された。 「恋しくば尋ね来て見よ和泉なる信太の森のうらみ葛の葉」の歌で有名な「葛の葉狐」の伝説に基づいた作品。 人間の男と恋に落ち子供まで儲けてしまった女狐の悲恋を描く。 本が出る約三ヶ月前の昭和37年5月1日に、同じ題材を扱った映画「恋や恋なすな恋」が公開されており、小島剛夕は「やりにくかった」と読者欄「花のたより」の中で語っている。 ちなみに「恋や恋なすな恋」は、「宮本武蔵」「飢餓海峡」の内田吐夢が監督し、大川橋蔵と嵯峨美智子が主演した。

(あらすじ)
陰陽師・賀茂保憲の内弟子である安部保名は、ある日、狩人の矢を受けた老婆姿の狐を救う。 老狐の孫娘・おコンは人間の男である保名に恋心を抱くが、保名は保憲の養女・葛の葉との婚礼を控えていた。 ちょうどその頃、帝は病に臥し、相次ぐ天変地異によって人々の心に不安が絶えることはなく、各地に騒乱や飢饉が起きていた。 未曽有の国難に対処するべく、中国に渡って白道仙人から「金烏玉兎集」という陰陽道の秘巻を譲り受けろとの命令が保名に下った。 葛の葉との婚礼を延期して唐土の国に渡った保名。 彼の無事を毎日祈願する葛の葉は、ついに病に倒れ、保名の帰りを待たずして他界する。 死に目に会えなかった保名は、悲嘆の余り正気を失い、行方不明となる。 当て所もなく彷徨う保名の目の前に、死んだはずの葛の葉が現れる。 それは保名を慕う女狐・おコンが変化した姿だった。


(補足/by風かをる)
カテゴリ『長篇大ロマン』、「小袖葛の葉」参照