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16 春秋走馬燈


(解題)
つばめ出版発行。 本編126ページ。 昭和37(1962)年9月頃に出版された。 作者自ら「燈(ともしび)シリーズ三部作」と名付けた幕末ものの第一作。 幕末から西南戦争にかけての激動期を背景に、仇敵の間柄にもかかわらず恋に落ちてしまった男女の苦悩を描く。 大きな時代の激流に飲み込まれた恋物語はありふれた題材だが、人妻が夫の仇を愛するというこれまでのシリーズにはない大人の恋愛を描いた点が新鮮である。 この作品あたりから艶麗な画風にさらに磨きがかかってくる。

(あらすじ)
主君・石河土佐守に裏切られ恋人の雪絵を喪った曽笛辰之介は、左遷先の飛騨高山で無為な日々を送っていた。 だが、幕末風雲急を告げ、官軍が錦の御旗を押し立てて江戸へ進軍するのを聞くや、俄かに復讐の念沸き起こり、辰之介は江戸に立ち戻る。 石河を斬り殺し復讐を果たした辰之介だったが、彼の心に去来するのは虚しさだけであった。 生き甲斐を完全に失った辰之介は、石河の遺言を聞き入れ、その妻・八重を実家のある九州熊本へ送り届けることになった。 八重は驚いたことに、亡き雪絵に生き写しであった。 戊辰戦争の混乱の中、辰之介と八重は熊本への道を急ぐ。 道中、二人は仇の間柄でありながら徐々に心を通わせるようになる…。


(補足/by風かをる)
カテゴリ『長篇大ロマン』、「春秋走馬燈」参照