クリックすると大きい画像が見られます

14 朝顔日記


(解題)
つばめ出版発行。 本編126ページ。 昭和37(1962)年6月頃に出版された。 人形浄瑠璃の「生写朝顔話」(通称は「生写朝顔日記」または「朝顔日記」)が元ネタである。 この時代物の人形浄瑠璃の主人公は宮城阿曽次郎(のちに駒沢次郎左衛門)と深雪のカップル。 この宮城阿曽次郎のモデルは、江戸時代前期の陽明学者・熊沢蕃山。 熊沢蕃山は、「近江聖人」と称えられた中江藤樹の門人であり、岡山藩池田家の藩政改革に取り組んだ人物。 人形浄瑠璃の元ネタとなったのは、蕃山の作と伝えられる小唄である。 人形浄瑠璃の知識がない人には、どうして熊沢蕃山が主人公で若き日の名前を宮城阿曽次郎というのか、さっぱりわからないだろう。 もっとも、感傷的な悲恋話は小島剛夕の得意とするところであり、基礎知識がなくても充分面白く読める。

(あらすじ)
不逞の輩から助けたのをきっかけに、宮城阿曽次郎は深雪と深い恋に落ちた。 深雪は備前岡山藩池田家の重役の娘であった。 阿曽次郎は、近江国小川村にいる陽明学者・中江藤樹の門下に入り、勉学に励む。 やがて深雪は藩主の命により父と共に岡山へ帰郷することになった。 彼女に一目会って別れを告げようと願う阿曽次郎はであったが、深雪に想いを寄せる粗暴な伊丹弥十郎が阿曽次郎の行く手を阻む。 二年後、岡山藩の藩政改革のため、中江藤樹の代理として門人の熊沢蕃山が赴任することとなった。 藩主の肝煎りで蕃山と深雪の縁談話が持ち上がる。 熊沢蕃山こそ宮城阿曽次郎その人であったが、改名の事実を知らぬ深雪は、蕃山と顔を合わす前に家出してしまう。


(補足/by風かをる)
カテゴリ『長篇大ロマン』、「朝顔日記」参照