クリックすると大きい画像が見られます

柳生忍群 第二巻


(解題)
三洋社発行。 本編176ページ。 昭和35(1960)年晩秋(11月下旬頃?)に出版された。 本文扉に副題として「黒いかげろう篇」と記されている。 第2巻の発売はかなり遅れたらしく、編集後記にお詫びが載っている。 しかし遅れただけあって、絵の完成度とストーリーの面白さは第1巻以上である。 前作のラストから十五年後が舞台。 如月佐十郎と利香の間に生まれ、忍者に育てられたかげろうが登場。 「風盗」と呼ばれる忍犬の群れとかげろう率いる忍者集団が対決する一連のシークエンスは『柳生忍群』全編の中でも屈指のアクションシーン。 その躍動感と迫力は、思わず手に汗を握るほどの出来栄え。 後半には宮本武蔵の養子宮本伊織も登場し、柳生十兵衛の身辺は俄かに慌ただしくなる。

(あらすじ)
如月佐十郎とその妻利香が宿願を果たせず柳生の剣の下に倒れてから十五年が経った。 ある日のことである。 公儀隠し目付の服部半蔵は、伊賀の里を訪れ、頭領の忍者かげろうと会談する。 三代将軍家光上洛に際し、邪魔者である風盗一族の掃討を依頼するためであった。 その場で半蔵は、若いが恐るべき技量の忍者を紹介される。 頭領と同じく「かげろう」と呼ばれるその若者は、実は如月佐十郎と利香の間に生まれた子で、佐十郎と柳生十兵衛の決闘の場に偶然居合わせた頭領かげろうに拾われて、今日まで育てられてきたのである。

年老いた頭領かげろうは、体力気力ともに衰えた自分に代わり、「子かげろう」に風盗一族討伐の任を命じる。 若きかげろう率いる忍者集団と風盗一族の戦いは、熾烈を極めたが、かげろう側の勝利に終わった。 同行した服部半蔵は、目的を達するためなら手段を選ばぬかげろうの非情さと冷酷さに戦慄する。 その一方で、半蔵は柳生十兵衛の「日ノ一ノ術」の正体を知っていた頭領かげろうを暗殺。 それを知った「子かげろう」は柳生への挑戦を決意する。 折しも、江戸城内において、宮本武蔵の養子宮本伊織と柳生十兵衛三厳の御前試合が行われようとしていた。


(補足/by風かをる)
「柳生忍群(全5巻)」は後年、「柳生陰ノ流レ」(週刊漫画アクション連載)として描き直されました。 只、物語に大きな影響を持つことになる「日ノ一の術」は「くノ一の術」として登場しています。 「くノ一の術」に関しての説明がありますが、無理やり感があり、今一つスッキリしません。 なぜ術の名前を変更したのか不思議です。

また、成瀬氏が躍動感と迫力を感じたと言われている場面(「風盗」と呼ばれる忍犬の群れとかげろう率いる忍者集団の対決シーン)は剛夕先生自身も大変気に入っていらっしゃたようでくり返し作品に取り入れています。 (例:「忍鬼 赤不動」 「忍法 影一字」 「忍者 ハヤト」等) また、剛夕先生が漫画化されている作品に柴田錬三郎原作の『赤い影法師』がありますが、剛夕先生はこの作品からたくさんのヒントを得ていたようです。