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26 歸去来峠(小島剛夕・名作劇場1)

(解題)
つばめ出版発行。 本編146ページ。 昭和38(1963)年8月頃に出版された。 『書籍雑誌卸月報』では7月の出版予定。 本文扉のタイトルは「帰去来峠」となっている。 これまで25巻を数えてきた甘美で華麗な「長篇大ロマン」シリーズをさらに発展させるべく、強い野心と意気込みをもって創刊された「小島剛夕・名作劇場」の第一弾。 巻末の「創刊のことば」の中で、小島は、「この『名作劇場』は『豪壮時代劇』を描くことに主力を傾けている」と語っている。 無二の親友が敵同士となって刃を交えることになる悲劇を壮大なスケールと抜群の語り口で描写。 過去に描いた作品からのモチーフやアイディアが所々に鏤められたこれまでの集大成的作品。 後編の『修羅無常』ともども一気に読ませる。

(あらすじ)
九州・薩摩藩のお話。 卯月小七郎と風見修平は、幼い頃から無二の親友であった。 しかし、父が伊賀組に属する公儀隠密であったことを修平が知った時、二人の友情は無惨にも消え失せる。 受け容れざるを得ない宿命として隠密の役目を背負った修平は、甲賀組隠密の襲撃に乗じて、鹿児島城内に秘蔵される神君家康公直々のお墨付きの奪取に成功する。 だが、その混乱の中で、修平は図らずも恋人梢の父を斬ってしまう。 友情・信頼・忠義を踏み躙った修平に対する小七郎の怒りは凄まじかった。 秘文書を携え江戸への帰路を急ぐ修平が帰去来峠に差し掛かった時、修羅の鬼と化した小七郎が行く手を遮った。