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9 千姫絵巻


(解題)
つばめ出版発行。 本編128ページ。 昭和37(1962)年1月頃に出版された。 前作『ふり袖狂女』に掲載の次号予告では、「淀と千姫」というタイトルで紹介された作品。 当初の構想では、豊臣秀頼の生母・淀殿と徳川家康の孫娘・千姫の関係に重点を置いたストーリーであったと推測されるが、実際の作品では、千姫と秀頼の儚い愛、千姫を救った坂崎出羽守の乱心などのエピソードに多くのページが割かれ、戦乱と権力の犠牲者・千姫の悲劇が格調高く描かれている。

浪曲の「吉田御殿」や、三隅研次監督・山本富士子主演の映画「千姫御殿」(昭和35年・大映)あたりが元ネタとなっているように思われる。 また、この『千姫絵巻』が出版された直後の昭和37年3月25日に、東映制作の映画「千姫と秀頼」が封切られている。 この映画は、三上於莵吉の小説を基に、マキノ雅弘が監督した。 主役の千姫を美空ひばりが演じ、そのほか、秀頼は中村錦之助、家康は東野英治郎、坂崎出羽守は平幹二朗、柳生但馬守は近衛十四郎、片桐隼人は高倉健、という豪華キャストであった。 この『千姫絵巻』は、大作映画の封切に併せたタイアップ的作品だったかもしれない。

(あらすじ)
豊臣秀吉の子秀頼と徳川家康の孫千姫の婚礼は、まさに政略結婚と呼ぶべきものであったが、当の秀頼と千姫は、周囲の思惑とは別に、深く愛し合っていた。 だが、家康の権力への欲望は、それを許してはくれなかった。 天下平定の総仕上げとして、徳川と豊臣の最終決戦の火蓋が切られた。 大坂夏の陣である。 衆寡敵せず、豊臣家は敗れ、大坂城は猛火に包まれた。 家康から千姫救出の命を受けた坂崎出羽守は、落城寸前のところで千姫を救い出すが、愛する秀頼と最後をともに出来なかった千姫は、坂崎出羽守のことを深く恨むようになる。 救出が成功すれば千姫との結婚を許すと家康に口約束されていた坂崎出羽守は、千姫から頑なに拒絶され、ついに乱心してしまう。


(補足/by風かをる)
カテゴリ『長篇大ロマン』、「千姫絵巻」参照