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柳生忍群 第五巻


(解題)
三洋社発行。 本編144ページ。 昭和36(1961)年夏に出版された。 本文扉に副題として『宿命』と記されている。 第4巻をもって完結したにもかかわらず、どういうわけか出版された第5巻。 ストーリーは続編ではなく、全く関連性のない某藩でのお話。 表紙絵に記されている文言は、第3巻の内容と一致し、どうして第5巻のカバーに使用したのか意味不明。 さらに酷いのは、中身の絵。 似せてはいるものの、どこからどう見ても小島剛夕が描いたものでないのは明白。 当時小島と絵が似ていた久慈あきらが急遽代筆した可能性があるが、確証はない。 精彩を欠いた物語と絵。 粗製濫造を得意とする貸本漫画の悪しき実例として記憶されるべき本である。

(あらすじ)
某藩での物語である。 御庭番衆に登用された東佐四郎は、万が一の時のために城内の抜け道を御庭番の支配役から教えられる。 藩内に潜入している柳生の忍者達は、その秘密を探ろうと必死であった。 ある日、佐四郎は病床に伏す父から東家は代々公儀隠密だったと知らされる。 青天の霹靂の事実に動揺する佐四郎だったが、公儀側の忍者としての使命に目覚め、任務を果たそうと決心する。 しかしそれを不服に思う実弟の伊織は兄を逆賊として討ち果たすべく剣を抜くのだった。


(補足/by風かをる
「柳生忍群」の5巻を読んだとき、成瀬氏とまったく同じ感想を持ちました。 4巻で終わっているのになぜ5巻? 絵柄が久慈あきらに酷似。 表紙の文言については3巻の内容に一致するとあるように2巻の巻末によく似た予告文言が記載されています。(以下抜粋)

剣の掟に生命をかける伊織……
忍びの宿命に生きぬくかげろう……
剣忍両道に苦しむ十兵衛……
そして云われざる骨肉を想う半蔵……
因果坂に今や血風月を濡らさんとして第二集は終わる!……

第5巻は確かにとってつけたような内容になっていて何かつながりがあるのではないかと何度も読み返したりしたものです。 つながりと言えば「柳生忍群・柳生十兵衛」の登場ぐらいでしょうか。 そして些細なことですが主要な登場人物の「佐四郎」、「伊織」の兄弟の名前が故意か偶然か宮本伊織、如月佐十郎と似ています。

4巻までのストーリーがのちの『柳生陰ノ流レ』(週刊漫画アクション連載)であるとすれば、この第5巻の内容が『柳生忍群』(コミックmagazine連載)にあたると考えます。 コミックmagazine連載のストーリーの中には「宿命」というタイトルもありますし良く似た話も掲載されています。