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B6判 「無明逆風剣」


(解題)
ひばり書房発行。 本編128ページ。 「ひばりの漫画全集」第342巻として昭和33(1958)年9月あるいは10月頃に出版された。 『かげろう殺法』の後日談と言える一編で、謎の素浪人かげろう扇四郎が再び胸のすくような活躍を見せる。 ライバル左文字典獄も再登場。 大老水野越前守の失脚を狙う陰謀を背景に、扇四郎と盲目となった典獄の宿命の対決が描かれる。

タイトルの「無明逆風剣」は、扇四郎に打ち勝つべく典獄が自らの眼を焼いて会得した必殺剣の呼び名。 この「無明逆風剣」の名称とその技は、物語の冒頭に「無明逆流れ」という剣法の説明文があることから、南條範夫による連作小説「駿河城御前試合」の影響を大きく受けていること明白である。 小島はこの作品でもデビュー作に比肩する絵の上手さと語り口の妙で読者を魅了。 左文字典獄の性格描写も印象的で、敵役ながら憎めない人物として深く掘り下げて描かれている。

(あらすじ)
江戸の喧騒を嫌い気ままな旅に出ていたかげろう扇四郎は、江戸への帰路、暗殺団「黒風党」に襲われて深手を負った老人と出会い、一足先に逃げた娘しおりのことを頼まれる。 一方、「黒風党」に追い詰められたしおりを救ったのは、意外にも左文字典獄であった。 「黒猫組」事件で扇四郎に敗れた典獄は、自らの眼を焼いて必殺の「無明逆風剣」を会得し、扇四郎と再び対決する機会を窺っていたのである。

入浴中の扇四郎を襲う典獄。 危機一髪のところで典獄を退けた扇四郎はしおりと出会う。 しおりは、大老水野越前守の家来である父と自分が「黒風党」に襲われたのは、水野家が神君家康公より拝領した軍扇を持っていたからだ、と話す。 政治改革を断行する水野の失墜を狙う者が「黒風党」を使って軍扇を奪おうと企んでいたのだ。