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43 花の白虎隊

(解題)
つばめ出版発行。 本編130ページ。 昭和40(1965)年9月頃に出版された。 『書籍雑誌卸月報』には同年の7月号と8月号に出版広告が載っているのを確認。 あまりにも有名な会津藩の「白虎隊」を題材にした幕末維新もの。 武士道一辺倒で時代の流れを読みきれなかった会津藩の人々が、官軍によって朝敵の汚名を着せられ破滅するまでを、三組の男女の悲恋を交えて描く。 特定の主人公を持たない完全な群像劇であるが、個人のドラマに特化しないことで会津藩の悲劇の全貌がより鮮明に映し出され、格調高い歴史絵巻となっている。 なお、この作品は、後にリメイクされ、『別冊漫画アクション』昭和45(1970)年7月25日号に掲載された。

(あらすじ)
時は幕末。 会津藩松平家は、薩長を初めとする勤王討幕派の力に押されて、苦境に立たされていた。 頑迷なまでに従来の武士道を信じる殆どの会津武士達は、打倒薩長を叫んで一歩も退かなかったが、時流を敏感に読み取っていた一部の者は何とか悲劇を回避すべく奔走していた。 許嫁・園江を捨てて脱藩した野村平八郎も会津藩の行く末を案じた一人だった。 だが、弟の駒四郎は、そんな兄の本心を知らず、脱藩者の汚名を着た兄を恨んだ。 鳥羽伏見の戦いで徳川方は大敗し、会津藩は朝敵となった。 江戸詰めの藩士の中にも、野村平八郎と同じく、会津藩の行く末を案じる人がいた。 由利の父は、薩長との対立を頑なに曲げない人々を何とか説得しようと試みたが、失敗に終わり切腹して果てる。 由利は薩摩藩士・新藤多久馬を愛していたが、時の流れはそれを許さず、由利は決戦の地・会津へと帰っていった。 ついに、官軍は会津に攻め込んできた。 駒四郎の友・貞吉を愛する商家の娘・お美加は、「白虎隊」に入隊した貞吉を追って戦火の中を彷徨う。 脱藩者の平八郎は死に場所を求めて会津に戻った。 武士道に潔く殉じることを美徳とする会津の人々は、官軍の攻撃を受けて次々と死んでゆくのだった。